債務整理全般

自己破産|交通事故の被害者が破産する場合

2022.02.02

交通事故の被害者となった方は、加害者に対して損害賠償請求ができます。

では、もし、交通事故の被害者が、多額の借金を抱えており破産することとなった場合、損害賠償請求権も財産として扱われるのでしょうか。

破産手続は、借金などの債務を、保有している財産によって、できる限り清算しようというものですから、価値ある財産は清算のために拠出していただく、つまり財産を失うことになります。

そして損害賠償請求権も、お金になるものとして財産ですので、例外ではありません。

しかし、交通事故で被害を被ったのにもかかわらず、その被害が救済されないとするのは、釈然としないことも確かです。

もともと破産手続においては、全ての財産を失うものではなく、一定の財産は自由財産として手元に残すことが認められます。これは、破産手続には破産者の生活再建を図るという意味もあり、生活再建に必要な財産は手元に残すことを認めようというものです。

交通事故被害による損害賠償請求権は、当然に自由財産となるものではありませんが、破産手続において、破産管財人が、自由財産となる財産の範囲を拡張させることにより(自由財産の拡張)、これが自由財産と認められれば、被害者(破産者)の手元に残すことができます。

そして、交通事故の損害賠償請求権は、事故による被害を回復させるものとして、生活再建にとって必要不可欠な面もあります。債権者としても、損害賠償請求権の全てが債権の引き当てとなることは、もともと想定しているものでもありません。また、慰謝料は、精神や身体に対する苦痛に対するものであり、その苦痛は被害者本人でないと感じるものではないので、もともと請求するかどうかは被害者の意思に委ねられるものであり、第三者が関わる性質のものでもありません(行使上の一身専属権)。

そうすると、破産管財人の判断ではありますが、損害賠償請求権も、その損害の項目(医療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益など)や、生活再建にとっての必要不可欠性、また金額等にもよるとは思われますが、少なくとも一部は、破産管財人による自由財産の拡張として、手元の残せる可能性も十分あるといえます。

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