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免責の許可
自己破産を申し立てる場合、その最終的な目的は、免責許可を受けること、つまり債務の支払いをしなくても良いと認めてもらうこと(借金をゼロにしてもらうこと)です。
破産手続が終われば(財産の調査や借金との清算が終われば)、後は、免責手続のみが残ることになります。
そして、裁判所によって免責許可決定がなされ、これが確定することにより、債務を支払わなくてもよいことになります。
免責許可決定も裁判ですので、免責許可で不利益を受けることとなる債権者は、不服申立(即時抗告)ができます。不服申立(即時抗告)ができる期間は、免責許可決定が官報に公告されてから2週間経過するまでの間です。その間に、不服申立(即時抗告)がなければ、免責許可決定は確定します。
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免責不許可事由
免責許可決定は、破産をすれば誰でもが受けられるものではありません。
法律(破産法252条1項)が定める「免責不許可事由」にあたる事実がある場合には、免責不許可となる可能性があります。
免責不許可事由には、以下のようなものがあります。
(1)財産を隠した場合(破産で財産を失うことを避けるためなど)
財産があることを裁判所に申告せずに隠したような場合です。財産を保有していることを判らなくするために、名義を変えてしまうことも財産を隠すことになります。破産で住宅(不動産)を失わないように、あらかじめ住宅(不動産)の名義を変えておけば良い、とおっしゃる方がおられますが、本当にこれを行うと、免責不許可事由にあたります。
(2)破産するしかない状態なのに、返済資金や生活費を捻出するために、クレジットカードで商品を購入してこれを著しく安い金額で売却した場合
破産するしかない状態となり、現金もないので、返済資金や生活費などを準備するためにクレジットカードで商品(商品券、ギフトカード、チケットなど含む)を購入し、中古品買い取り業者などに、不当に低い代金で売却処分をしたような場合、免責不許可事由となります。
クレジットカードのショッピング枠の現金化と言われるものは、これにあたります。
(3)借金の返済が出来ない状態になっている場合に、特定の一部の債権者にだけ、まだ弁済期限が来ていない債務を返済した場合
破産することにより身内や友人などには迷惑をかけたくないので、返済期限が来ていないのに身内や友人に借金を返してしまうような場合は、免責不許可事由にあたります。
(4)浪費やギャンブルが原因で多額の債務を負担した場合(浪費などで財産を減らしてしまい、その結果、多額の借金をした場合も含む)
パチンコや競馬競輪、賭け麻雀などでお金を使ってしまった場合、高額な飲食による支出、高価な洋服や電化製品、自動車などの購入が借金の原因となっている場合です。
つまり、収入に見合わない支出をしてしまった場合であり、実際には良くある話です。借金の返済が苦しくなり、お金を増やそうと宝くじを購入したり、totoを購入したりする場合もあり、これも金額次第ですが、浪費になることもあります。
最近では、携帯電話料金が高額過ぎる方も多く、裁判所から指摘を受けることが良くあります。1人で複数回線を契約されていたり(例:複数のスマホを契約、タブレット用回線を契約、スマートウォッチ用回線を契約など)、有料のゲームなどの課金が多額になっている場合などです。1人で複数回線を契約している場合、本当にそれが必要なのか、と問われることがあります。ゲームなどの課金が多額の場合は、他の娯楽費の支出とのバランスもあると思いますが、浪費だとの指摘を受けます。要するに、携帯電話料金が、身の丈に合った金額なのか、それだけの料金となるような利用が本当に必要なのか、といった点を指摘されることになります。
(5)破産申立前1年以内に、破産するしかない状態なのに(借金ができない状態になっているにもかかわらず)、他の借金の金額や収入・資産の内容をごまかして借金をした場合
普通に借金を申し込んでも、審査が通らないので、収入額を申告するときに、実際の収入額よりも多くした場合、他業者からの借入額を少なくした場合は、免責不許可事由となります。
(6)帳簿や書類などを隠したり、偽造した場合
債権者から債権届出がなされます。届出の締切は、個人再生手続開始決定から4週間後です。
債権者からの届出内容について、間違いがないかどうかを検討します(2週間程度)。間違いがあれば、異議を述べます。
同時に、この届出内容をもとに、再生計画(分割弁済計画)を検討・作成します。個人再生申立前に、既に、おおよその再生計画は作成しておりますが、正式なものを作成します。
債権者に異議がなければ、債権(再生債権といいます)が確定します(債権届出の締切から2週間程度後のことです)。
(7)虚偽の債権者名簿(債権者一覧表)を提出した場合
知人や身内からの借金の支払いを、破産・免責で免れるわけにはいかないということで、その知人や身内を債権者から除外したいという方がおられますが、そういう場合は、免責不許可事由となります。
(8)破産手続において、説明を求められて、これを拒んだり、虚偽の説明をした場合
例えば、借金の原因について、嘘を述べたような場合です。嘘であることがわかると、免責不許可事由となります。
嘘であることはバレない、と思う方もおられますが、これまでの経緯や種々の資料を精査しますと、説明の矛盾点が見つかるものです。この免責不許可事由がある場合は、免責不許可となる可能性が極めて高いといえますので、十分に注意する必要があります。
(9)破産管財人の職務を妨害した場合
(10)以前の免責許可決定の確定などから7年を経過していない場合
(11)破産者に破産法の義務違反行為があった場合
裁量免責
免責不許可事由がある場合でも、破産手続開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当であると判断される場合は、裁判所は、免責許可決定をすることができることになっております。
免責不許可行為の程度や、返済ができなくなった事情、今後の生活設計、生活再建のための真摯な努力などを考慮して、破産者に経済的な立ち直り、生活の再建のチャンスを認めるべきかどうか、という観点から判断されます。
免責の許可を得るために
免責不許可事由が一切なければ、免責許可決定がなされます。
しかし、程度の差こそあれ、浪費と言われる可能性のある支出があった方も多いといえます。
それが、免責不許可事由にあたるかどうかは、収入や生活状況次第、つまり身の丈に合った支出であったといえるかどうかではありますが、破産申立においては、免責不許可事由にあたる可能性もあることを念頭において対応すべきです。
免責許可を得るためのポイント
個々のご事情にもよりますが、具体的には以下の3点を念頭において、対策・対応いたします。
❶何事も包み隠さず、借金の原因など過去の経緯・事情や、財産などについて説明すること、つまり正直に、ウソをつくことなく明らかにする必要があります。
例えば借金の原因がパチンコにある場合、それを隠したいとは思います。しかし、そういうことは絶対に避けなければなりません。説明が虚偽であることが判明した場合には、免責不許可となる可能性が極めて高くなります。
また、財産があるのに正直に申告しなかったり(財産を隠した)、財産を処分した(売却、名義の変更など)のに、そのことを隠したりすることも、絶対に避けなければなりません。このようなことがあると、免責不許可となる可能性が極めて高くなります。
❷家計の収入と支出を把握していただき、収入と支出のバランスがとれているかどうか、支出について本当に必要な支出かどうかを考えていただきます。そのために、毎月、家計収支表を作成していただくことがあります。場合によっては、スーパーのレシートや領収書を保管していただき、それをもとに、毎日、家計簿をつけていただくこともあります。
これらは、家計を立て直すための努力の一環です。つまり、家計の収入と支出を把握していただき、収入と支出のバランスがとれているかどうか、支出について本当に必要な支出かどうかを考えていただき、収入に見合った生活、収入の範囲内での生活を実践していただきます。
必要に応じて、弁護士から家計の支出の見直し、節約をお願いすることもあります。そして、貯蓄ができる状態を作る、また、実際に貯蓄をしていただきます。収入や支出は、変動するものですので、将来も、通常の生活費を超える支出や不意の支出を余儀なくされることもあります(例えば、病気や怪我、子の進学など)。そのような場合に、貯蓄がないと、また、借金をすることになってしまいます。貯蓄ができるような生活をしていただくことは、借金に頼らない生活を実現する、という趣旨です。
❸過去の生活を振り返り、過去の行動が適切であったかどうかを考える、そして、借金が増大していったことを反省する文章、今後の生活再建策を書いた文章などを、自筆で作成していただき、裁判所に提出する場合があります。作成の際には、弁護士がお手伝いいたしますが、必ず自筆(手書き)で書いていただく必要があります。
【破産管財人を選任する場合】
免責不許可事由の程度が大きい場合は、裁判所は、破産手続開始決定において、破産管財人を選任し、以後、数ヶ月間、お客様の生活について、経済的な側面(収入や支出など)を監督してもらう、という場合があります。
その結果、生活再建に向けた工夫や努力が認められ、今後、生活再建を果たすことができると判断される場合に免責許可を出す、という場合もあります。なお、破産管財人が線にされる場合には、裁判所・破産管財人の費用として、追加で、21万円程度は少なくとも必要となります。
破産管財人から質問されたことについては、誠実に答える、正直に説明する必要があります。また、破産管財人の業務に非協力的であったり、妨害したりすることも許されません。破産管財人の業務を妨害したり、協力しなかったり、拒絶したりすることは、免責不許可となる可能性が極めて高いといえます。
非免責債権
免責許可決定を得て、それが確定したとしても、免責されない債務があります。これは破産法253条1項に規定されています。
❶税金や社会保険料等の支払義務
❷破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務
❸破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償債務
❹イ 夫婦間の協力扶助の義務 ロ 夫婦間の婚姻費用の分担義務 ハ 子の監護に関する義務(養育費の支払義務など)
ニ 親族間の扶養義務
ホ イから二までの義務に類しる義務であって、契約に基づくもの
❺従業員に対する給与の支払義務や預かり金の返還義務
❻故意に債権者名簿(債権者一覧表)に記載しなかった債権者に対する債務
❼罰金等の支払義務
お気軽にご相談ください
ご自身が免責許可を受けられるかご不安な場合は、弁護士へご相談ください。
仮に不利な事実があったとしても、対応次第で免責を受けられる可能性もあります。
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